よりみち

 この“よりみち”は、家長:石津が勝手に、ウンチクを語ることで、「こんな馬鹿な男もいるんだ」と、皆さんに生きる勇気を与える為の文章を載せています。  尚、内容に関しての苦情、反論、哀れみなどはご遠慮ください。強がっているわりには、打たれ弱い性格なので・・。また「憩の家みち」とは何ら関係なく、あくまで個人的主張であることを重ねてご理解ください。

よりみち

孤独との戦いじゃ。

おそらくどこの小規模経営者もそうだろうけど、結局孤独との闘いだ。俺は弱いから、いつもそれに潰されそうになり、酒に逃げてばかりいる。世間的には、決断できる男に見られていると思うけど、実は優柔不断で、いつも悩んでいるダメな経営者だ。

今度の介護保険改正で、俺達のような通所介護は大きな減額になる。施設介護も益々人集めに苦労することが予測される。でも、それは別にいいんだ。俺は介護報酬は高すぎると思っていたし、もっと奉仕の精神が必要だと思うから、今回の改正はありだと思う。

ただ、俺の大嫌いな「加算」制度がどんどん拡大され、そんなものに頼らずに踏ん張っている施設の努力への評価はまったくないのが残念で仕方がない。俺は個人的に県庁に訪問して、俺なりの意見を述べてきた。でも、結局、役人は四角四面の評価しかできない。

「実績」「記録」「資格」「中身よりやったかやらなかったか」そんなくだらないものは関係ない。俺達は人間としての感性を大事に、闘っていこうぜって息まいてきたけど、役人からすれば、「逆にそういうものでしか、頑張っている事業所を評価できないんですよ」だとよ。まぁ、ごもっともの意見だろう。

若年性の認知症があったって、俺達は平気で受け入れてきた。アクティビティも、口腔ケアも、機能訓練も、要介護3以上の人の割合も多い、家庭環境に色々問題のある家庭も多い、虐待されていた人もいたが、俺はどんな人でも受け入れてきた。困った時はうちが何とかしてやる、そんな強い思いだけは負けたくなかった。だから、俺はここを無料で泊まらせてあげ、夜間には訪問もし、もう一つの家族として、できる限界のことはやってきたつもりだ。

でも、結局そんな目に見えない努力というのは評価されず、逆になまけている施設とみなされてしまう。仕方がないことだけど、悲しい現実だ。俺からすれば、利用者や家族に、全体評価をしてもらって、そこで加算の上限を決めればいいと思うけどな。一番大事なのは、利用する人の声だと思うし、その評価の視点がまったくなく、あくまでサービス事業所の実績に対する加算という点において、俺はあまり納得がいっていない。

俺も今回の改正である程度試算をしてみた。やはり現実的には厳しいことがわかった。福祉法人のように、タダで車を寄付してくれればいいけど、俺らは買わなければならない。それも全部で5台になる、管理費だって相当かかる。従業員だって、早く正規職員にさしてやりたい。正直、俺の思い描く福祉魂だけでは食べていけない現実がある。

だから、俺は今回の改正で、必要最低限の範囲においては、もらうべきはもらうようにした。もちろん、くだらない役人の考えたものに、全てのっかることはしない。でも、必要最低限、俺達はしっかりやっていることをあいつらにもわかって欲しいし、加算が増えれば利用者の負担も増えるわけだから、その点は慎重にやっていきたい。

基本は金じゃねぇ。福祉は心だ。それはそれで貫かなければうんこだ。

俺はこうして色々考えるとき、本当に孤独になる。経営者としての器がない。それでいて、福祉に対する強い思いがある。あいつらに負けたくない、オンリーワンを示してやりたいという欲求がある。昨今の、ビジネス化した介護業界において、俺達は違うんだということを、絶対に証明したいと思う。でも、それも存続なくして主張なんてできやしない。だから、いつも過激に振りまいており、1人我に返ると、そんな葛藤が俺を苦しめる。

この判断が正しいか間違っているか、それも俺の決断に委ねられている。今ではスタッフも10数名いる。最高のこいつらを守るためにも、俺はそれを慎重に考えなければならない。でも、いつもクヨクヨ悩んでいるのが現実だ。

誰にも相談できない、経営者って、傍から見ればよく見えるかもしれないけど、本当に辛い職種だと思う。借金もあるし、ポリシーもあるし、プライドもあるし。本当に面倒くさい奴だよな。

組織で働いている人も、それなりに辛いことはあるだろう。仲間は時に反作用することも多い、出世で収入が決まり、自分の介護魂を実現できなくて、悔しい思いをしている奴はきっと多いことだろう。その点からすれば、俺は本当に幸せものなのかもしれない。孤独だけど、主張できる喜びは、たしかに言えると思う。まぁ、誰も相手にしてくれんがよ。

一度、経営者をやると、なかなか使われることは難しいかもしれない。特に俺なんてわがままだから、絶対に無理だな。まぁ、もっともここが潰れたら、福祉業界なんて絶対にやらないけどさ。こんな汚い介護業界の悪口を言いまくって、評論家ズラしてやろうかな。

まぁ、孤独だけど、俺は自分のポリシーを貫き通してやるさ。実情をしらないアホな役人共に振り回されるのは、いつも俺達のような現場の人間だ。でも、しっかりとした信念を持ち、仲間が最高に楽しむことができるステージを作り、それで人生の大先輩と触れ合うことができたら、そんな最高なことはないわな。

でも、俺の立場で一番いいところは、飲んで潰れて駅に寝ようが、暴れようが、変な話、警察に捕まるようなことしても、別に関係ないから楽っていえば楽だよな。よくサラリーマンの疲れた顔をみると、つい同情しちゃうもんな。

先日、御殿場から帰ろうとしたら、ベロベロに酔って帰る方向が分からなくなって、近くにいたねぇちゃんに聞いたんだ。そしたら、丁寧に教えてくれよ。その後がびっくりだったぜ。「あの〜、石津さんですよね?私、以前、○○高校の講演会に出席したものです」って爽やかな笑顔で言われてよ。

俺なんて、声かけるまで一人でブツブツ言ってよ、下手したらそのねぇちゃんと飯もいければなぁ、なんて変な考えして声かけたら、そんな答えが返ってきやがる。一気に酔いが覚めたな。きっと、ツイッターかなんかで、「今、偉そうに福祉を語っていた石津が酔いながら御殿場線に乗ってるNOW」とか打たれていることだろう。悪いことはできへんな。

まぁ、ジャージとサンダルで新幹線に乗って東京で講演する奴もそんないないと思うけど、やっぱり気が楽でいい。でも、やっぱりどこかで誰かがちゃんと見ていることを忘れちゃいかんな。

たしかに俺は孤独だけど、その周りには、きっとわかってくれる人もいるさ。ここには仲間もいるし、もう少しで10年になる。ここの道を頼ってきている人達の為にも、もうちょい踏ん張るしかないな。強いフリをして、まだ粋がってやるしかないわな。
でも、とりあえず、飲んで女に声をかけるのは、もうやめとこ・・。いい歳なんだし。

投稿日:2015/03/08 15:44:41