よりみち

 この“よりみち”は、家長:石津が勝手に、ウンチクを語ることで、「こんな馬鹿な男もいるんだ」と、皆さんに生きる勇気を与える為の文章を載せています。  尚、内容に関しての苦情、反論、哀れみなどはご遠慮ください。強がっているわりには、打たれ弱い性格なので・・。また「憩の家みち」とは何ら関係なく、あくまで個人的主張であることを重ねてご理解ください。

よりみち

ケアネット総会の皆様へ

ケアネット総会ご出席の皆様へ

 本日は、私のくだらないウンチク話を聞いてくださり、本当に有難うございました。昔から言葉が足りず、知識がないのに攻撃的で、多くの方を傷つけてきましたが、今回の講演で、さらに不愉快な思いをされた方がいれば心よりお詫び致します。自分で言うのもなんですけど、心の中は、結構真面目で、臆病で、打たれ弱い性格なので、どうかお許し頂きたいと存じます。
去年、私が「福祉道」という本を出したきっかけは、多くの人にもっと「福祉」という言葉の意味を考えてもらいたい、そして、昨今の介護ビジネスに警鐘を鳴らし、介護問題が、人・物・金に着目される現代において、どんなに時代遅れと罵られようが、「忠恕の心」「相互扶助」という福祉の根幹を伝授する必要があると思ったからです。
今から約4年前、私は待井さんと山田さんに出会いました。様々な活動をお手伝いさせて頂く中で、私は、今まで自分が培ってきた「強さ」というものが、実に醜く、浅はかなものであると気がつきました。不良時代、上辺だけの権力に憧れて、それを誇示することに強さを感じていた自分。社会に出て、金で価値が決まり、出世で将来が決まり、いつも周りと比べて怯えていた自分。でも、私は、ALSという病と闘う二人の戦士を見て、「生きる強さとは何か?」と考えさせられました。
一度は死を選んだ待井さんが、ご主人の愛により、また新たな人生をスタートさせました。もちろん、夫婦間のことは計り知れないご苦労があったと思いますが、あらゆる障害も克服し、自らの決断で前に前に進むその姿こそ、「生きる強さ」ではないでしょうか。山田さんも、己の病を振り払おうとするが如く、同じように苦しむ方の為に日々努力をされていますが、そうした汗と涙こそ、本当の「生きる強さ」ではないでしょうか。
人の命には限りがあります。でも、その限られた命を、真っ白に燃え上がる炎のように充実させるには、「人間の強さ」が不可欠であり、それを培う為には、挫折の中から微かな光を求めて立ち上がろうとする力、醜いと知りながら命ある限りもがき続ける力が必要だと思うのです。たとえ、儚く散りゆくものであったとしても、その命はきっと誰かの心の中に生き続け、眩いほど美しい存在として胸に残ると思います。もちろん、それは並大抵の努力で出来るものではないし、1人で行うにも限界があります。だから、決して己の持っている力だけに頼るのではなく、それを応援してくれる家族や仲間という戦友が集まってこそ、本当の力を発揮できるのです。
つまり「道」は、己の努力により切り開くものではあるけれど、誰かの手助けにより、その人の新しい「道」が開かれるのであれば、そこは純粋に手助けすればそれでいい。そして、その行動は、極々自然で清らかで美しいものであり、そうした繰り返しこそ、生きることの強さを高め、人間として成長させていくものだと思っています。私達は今こそ、業や職という弊害を通り越し、人間として当たり前の「福祉の心」を、お互いに育む必要があると思うのです。
私には、まだ二人の戦士のように生きる強さが培われていません。時代や情報に左右され、毎日を怯えながら過ごしています。でも、少しでも、皆様の生き様を見習い、共に闘い、それを見届けることができたらなら、きっと私もいつか強い人間になれると信じています。そして、これからも介護という実践を通して、福祉の意味を追及し、出会いと別れの中で生ある美徳を表現し、その命の価値を噛み締めたい、それが私の生きる道、「福祉道」そのものであります。
長々と講釈を述べたことを、お詫びすると共に、皆様の益々のご発展・ご多幸を心よりお祈り申し上げます。本日は「変な男」にお付き合いくださり、ありがとうございました。

平成22年6月12日
憩の家みち 家長 石津道弘
投稿日:2010/06/14 09:39:59