よりみち

 この“よりみち”は、家長:石津が勝手に、ウンチクを語ることで、「こんな馬鹿な男もいるんだ」と、皆さんに生きる勇気を与える為の文章を載せています。  尚、内容に関しての苦情、反論、哀れみなどはご遠慮ください。強がっているわりには、打たれ弱い性格なので・・。また「憩の家みち」とは何ら関係なく、あくまで個人的主張であることを重ねてご理解ください。

よりみち

H22.6.3スタッフへの文章A

そもそも私は、最初から介護事業でお金を儲けようと思ったわけでなく、そうしなければ食べていけなかったから、やむを得ず選んだだけに過ぎません。だから、この数年間で得た物のすべては、今こうして働いているみんなのものであり、これから勝ち得る計り知れない価値も、全てみんなのものだと思っています。だから、築き上げたその力を、これからも継続する力に是非とも変えて欲しい。そして、時が来たならば、皆が納得するように終わることが、憩の家みちとしての潮時だと思っています。
 再度申し上げておきましょう。これからの介護の世界は、政治も役所も社会全体も、「超高齢化」「介護の社会化」というキーワードの基、時代と共に肥大化し続けるでしょう。ビジネスチャンスと睨んで「利用者の為」というキャッチフレーズの下で銭勘定ばかりする事業所もどんどん増えることでしょう。役所だけでは管理できず、それを監督できる第3者機関も増え、現在の資格だけでは物足りず、新たな制度と共に創設され、それがやがて標準化されていくでしょう。でも、一方で、政府は継続性のない補助金をばら撒き、賢い事業所はそれをあざ笑うかのように裏でぼろ儲けをしている現実があるのです。社会福祉法人も医療法人も、株式会社もNPOも、表では綺麗事を言っているだけの、私からすれば詐欺師にしか思えません。今まで何度も厚生労働省にも苦情を言い、県の担当者にも文句を言いましたが、「馬の耳に念仏」です。私自身、諦めの境地であり、最近ではテレビや新聞などで「福祉」「介護」という言葉が出る度、自分の正義と現実の不条理に耐えられなくなり、強いストレスを感じているのが現状です。
私は福祉、介護に対して、人一倍思い入れが強いです。だからこそ、曲がったことはしたくない。介護保険は素晴らしいものであると思うが、選択する権利と放棄できる権利を得たことにより、古き良き日本人として「困ったら支えあう」当たり前の文化、親が子を思い、子が親を敬う「家族愛」そのものが欠落したのではと危惧しています。世間では、介護の問題が人・物・金に集中していますが、誰もその本質を理解できないのが現実なのです。これから社会保険料、介護保険料も確実に上がり、介護事業所も増え続け、資格介護が通例化することは確実であり、そうした社会のスピードが、確実に福祉精神論を疎かにしてしまったと思います。
どんなに時代遅れと罵られようが、「忠恕の心」(自分に忠実に、相手には思いやりの心)を継承すべきであり、それが、相互扶助という福祉の根幹だと信じています。すべてがサービスというものになり、大切なボランタリズムの精神を失ってしまえば、益々心なき人間関係が横行し、勝ち負けですべてが決まる介護の差別化という病理的結末を迎えると思っています。高齢化の大きな波のもと、多くの人が着目するこの業界は魅力的に写るかもしれません。しかしながら、「人の世話をする」ということは、もっと純粋で清らかで美しい愛情がなければ絶対に進展はありません。つまり、そうした大事な福祉道を継承しなければ、いつまで経っても介護の社会的地位は上がらないと思っています。
どんなに時代が変わり、システム化された社会が構築されようとも、絶対に変わらないものは、人の心であり、愛であり、そこに直接携わる人間こそ、いつまでも変わらない絶対的なアナログでなければならないと思っています。
先日、「福祉道」という言葉が正式に商標登録されましたが、それは、そうした熱い思いを持続させなければならない、己の戒めの為でもあるのです。
私は、介護という実践を通して生きることの価値を高め、福祉の意味を追求したいと思っています。四角四面のサービスとしての介護ではなく、人生の先輩を敬い、大義為に闘う戦士でなければなりません。限られた時間の中で、おそらく最後の舞台となろうこの場所で、いかに燃え上がる炎のように充実させる時間を提供できるかが重要であり、その目的の為に切磋琢磨することにより、各々が人間として成長していくものだと思っています。
私は、これからも、皆と共に憩の家みちという小さなコミュニティーの中で福祉の実現を目指して頑張っていく所存であります。ここを必要としている方が1人でもいる限り、私は先程述べたことを実践していく使命があると思います。この最高の仲間と共に、同じ方向で歩んでいくことが最高の幸せだと思っています。たしかに、出会いがあれば別れがあるのも当然です。環境が変われば人も変わる。人は時代の流れに翻弄されるものであり、あくまでこの出会いは、その時代の1点に過ぎません。恋愛と同じように、私も皆さんを束縛するような真似はしたくない。だから、ここで出会えた感謝の心はそれとして、皆さんには、これから発展する介護の世界で羽ばたくも良し、新しい舞台で自らを磨くも良し、己の欲するがままに生きて欲しいのです。
ただ、出来ることならば、その時の許す限り、少しでも長い間、是非とも力になってもらいたい。憩の家みちは、小さな家で、ハード面では、他所の施設と比べると明らかに劣っています。でも、それを一切感じさせず、明るいみんなの笑顔がこうして見られることは、各々の努力そのものだと思っています。だから、私は、この最高のメンバーを1人足りとも失いたくない。この出会いは、まさに「盲亀浮木の縁」であり、これからのみちにとって、1人1人が絶対になくてはならない存在であるということをご理解ください。
私は頼りない男ですが、何でも相談に乗るし、出来る最大限のことをします。勤務の悩み、将来のこと、賃金や資格のことなど、何でも困ったら話をしてください。そうすることができれば、私は大切な仲間を失うという恐怖から少しでも逃げることができるのです。
介護の世界なんて本当にくだらない世界です。だけど、みちの空間は他とは違う、俺達だけの清らかな世界です。だから、こうして出会えた絆を大切にする為に、今一度力になってもらいたい。やがて散り逝く生命の最後を、一緒に見届けて下さい。時間の許す限りでいいから、この変な男を応援してください。それが私からのお願いであります。
 「吾道は一、以って之を貫かん」、最高の仲間と共に、この福祉道を貫く所存であります。
草々

平成22年6月3日
 家長 石津道弘
投稿日:2010/06/07 10:44:20