よりみち

 この“よりみち”は、家長:石津が勝手に、ウンチクを語ることで、「こんな馬鹿な男もいるんだ」と、皆さんに生きる勇気を与える為の文章を載せています。  尚、内容に関しての苦情、反論、哀れみなどはご遠慮ください。強がっているわりには、打たれ弱い性格なので・・。また「憩の家みち」とは何ら関係なく、あくまで個人的主張であることを重ねてご理解ください。

よりみち

認知症の方とその家族の為の飲み会を終えて。

「認知症の方とその家族の為の飲み会」ご参加の皆様へ

この度は、お忙しい中、当家主催の会にご参加頂きまして、誠に有難うございました。準備不足も否めず、「どうせなら飲んで忘れよう」等の暴言も否めず、不快な思いをさせてしまったこと、心よりお詫び申し上げます。
この相良の地は、人情味溢れる店も多く、酒も肴も旨く、波音に酔い、つい記憶がなくなることがありました。今回の企画も、深い思いはなく、ただ、いつものように、楽しく飲んで笑って一緒に忘れようという純粋な思いだけでした。本来ならば、もっと当事者同士の出会いの場としたい思いはありましたが、また、その反省は次回へ繋げて参ります。
今から14年前、「福祉とは何か?」という永遠のテーマを求めて、憩の家みちをスタートしました。日々、理想と現実、矛盾と葛藤の連続ではありますが、この度、こうした会が開けたことを心より光栄に存じます。また、この企画にご協力して頂いた「すけろくドリーム(株)」様は、毎週日曜日、当家「働き隊」へ掃除の仕事をご提供下さり、日ごろより本当にお世話になっています。この無知な企画にも真摯にご協力頂き、本当に感謝致します。
お蔭様で、当家の「働き隊」については、県のご推薦もあり、地元の個人、団体から少しずつお仕事を頂いており、4月は過去最高売上(15000円越)になると思います。店内やゴミ屋敷の掃除、民家の草取り、ファミリーマート様の駐車場掃除をはじめ、最近では地元霊園の草取りも任されて、本当に有難いことだと思います。また、先日、長い間、うちのデイに利用された方が亡くなり、そのお宅へ遺品の整理に伺いました。遺影を前に思い出話に涙しながら、使えるものは有難く頂戴し、ご遺族の方も本当に喜ばれていました。もはやデイの概念を超え、亡き後もこうしてお世話ができることに、私達の存在意義と可能性を見出せたことを有難く受け止めております。たまに、遺品整理やゴミ屋敷の掃除をしていると、「俺の仕事何だっけ?」と思うこともありますが、こうした作業の繰り返しから、明らかに何らかの「強さ」を得ていることは確かだと思います。
また、地元勝間田小学校の下校時の「見守り隊」、そして、今回のように、お酒が大好きな人が集まり、語れる場所「飲兵衛隊」(仮称)。これらの活動は、少しでも「認知症」という病の閉鎖的な観点ではなく、たとえ忘れる病だとしても、そのエネルギーを認識し、団結し、個人として尊重し、もっと社会に発信すべきという思いからです。
とはいえ、チンピラあがりの不肖者が運営していることもあり、多くの誤解を生み、場を間違え、冷ややかな目で見られたことも少なくありません。でも、こうした皆様との出会いにより、ここまで歩めたこと、本当に感謝しております。
私の親父は、山口県萩の出身。幼き頃より吉田松陰先生の学問や思想、行動や狂気などを叩き込まれ、「至誠にして動かざるもの、未だ之あらざるなり」など無理に覚えさせられました。酔って帰れば夜中でも起こされ、「お前は長州藩士の末裔じゃ、天下国家を取れ!」とよく説教されたものでした。もう高齢でそんな元気はありませんが、私自身も歳を重ねるにつれ、「草莽崛起」という意味を学び、落書きだらけの教科書をもう一度読み、高杉晋作や久坂玄瑞という日本男児の漢らしい生き様に憧れるようになりました。
もっとも、私にはそのような能力もないし、時代を変えたいというエネルギーも仲間もいません。所詮、世の中を動かすような奇兵隊にはなれるはずもありません。
ただ、こうした小さな活動が、少しずつ周りに変化をもらたせてくれているのは事実であり、これからも「分相応」、身の丈を考えた活動を地道に行って参ります。
先日の若年性認知症モデル事業の報告会でもお伝えした通り、これでも経営者。当初は、「働き隊」も、うちのウリにしようと考えていました。突出したデイで目立ってやろうと、汚い心もあったのも事実です。でも、一緒に、同じように、汗びっしょりに働きながら、人の嫌がる仕事も胸を張って行っているうちに、その考えは間違っていたことに気が付きました。苦労して稼いだ1000円を握りしめ、現場談義に花を咲かそうとしても、ここに戻れば全く覚えていない。本当に時に虚しくなります。でも、そうしたことを繰り返しているうちに、自分の考えが小さいこと、醜いこと、浅はかなこと。そんな「気付き」を得ることができました。
2時間もぶっ通し、ただ黙々と草取りをする姿を見て、何も感じない人はいないと思います。一点の曇りもなく、邪心もなく、純真無垢なあの姿に、共に闘おうという決心がついたことは、何より我々にとって大きな収穫だったと思います。
「私達は誰の為に、何の為に動くのか」という核心に近づいたこと、それはつまり、「福祉とは何か」という結論にやがて繋がります。
単なる事業所としての枠を超え、「もっと外へ、もっと社会へ、働く、稼ぐ、そして飲む」、そうした各々の力を示すことが大切であり、今回、このような企画を通じて、どんなに自分達の力が弱くても、組織の後押しがなくても、思いがあれば人は動くということを、少しでも皆様と共に感じて頂ければ光栄です。
私達の使命は、たとえ認知症があっても、まだ、誰かの役に立てる、社会の為に働ける、自分のご褒美の為に酒に酔える、そんな「強さ」を証明すること。もしそれが出来なくなったら、家族と一緒に私達が全力で支える。過去の栄光を伝承しながら、我々が証人となって語り続ける。そして、我々も最期まで、限界までそれに挑み、見届ける。亡き後もその関係は永遠に続く。それこそが、資格や肩書ではなく、本当のプロの姿だと思います。
幸いにして、私達には介護保険制度があり、それで生活ができるという恩恵を得ています。それならば、各々が「福祉」という意味をもっと考え、学び、もって行動することが大切だと思います。こうした宴が新たな縁を生み、共に歩み、支え合う仲間として、また明日からの希望へと励んでいけることを誇りに思います。
 本日は、貴重なお時間を頂きまして誠に有難うございました。皆様と出会えたこと、そして、素晴らしいお酒が飲めたこと。自分は本当に幸せ者です。
ただ、今宵は気持ちよく、忘れさせて頂きます。では・・・・。
 平成31年4月17日
 憩の家みち
家長 石津道弘
次回、「絶品の江戸前寿司を堪能」乞うご期待!
投稿日:2019/04/20 10:04:50